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2011年4月13日

手仕事の意味

カテゴリー: 家づくりの理念

これから再びまちを
興していくにあたり、
どんな住まいづくりが
望ましいだろうか、
という問いかけが
今常に私の頭の
片隅にあるわけですが、

やはりその方法論は、
仮設であれ何であれ、
「手仕事」が
基本であってほしいと
思います。

戦後、時代の要請で
大量生産を求められた時代から
今に至るまで、
手仕事は衰退の一途を
辿りましたが、

しかしその結果、
私たちの周りは、
モノも住まいもエネルギーも、
「手に負えないもの」ばかりに
なってしまいました。

確かに手仕事は、
時間がかかります。

その分おカネも
かかる傾向にあります。

品質は不安定かもしれません。

しかし一方で手仕事は、
実体のある雇用を産みます。

また手をかけただけの
品質と付加価値を産み出す
可能性を秘めています。

例えば、
木材の世界で
高いブランド価値を誇る吉野杉。

吉野の山は、
苗木を密植し、
途中間引いたり
枝を落としながら
木を育てるという、
非常に手間のかかる
今の育林方法の
発祥の地と言われていますが、

その理由は、
もちろんそうすることによって
質の高い木を育てることが
できるからですが、

もう一つ、
農業が成り立たない
中山間部において、
山で人々の仕事を作るために、
という話を聞いたことがあります。

同じように、
復興に向けて
敢えて手間を要する
木の住まいを作るということは、

山にまちに仕事を作り、

それが巡り巡って
住み心地のよいまちと
経済の活力を産み出すことに
つながることにならないかと
思うのです。

課題はとてつもなく
大きいと思います。

ある意味で、
社会に大きな包容力が
求められることです。

しかし
遠くにありすぎて見えないもの、
大きすぎて手に負えないものに
頼る社会の脆さと危険を
肌で知った今、

食べるもの然り、
住まいも然り、
エネルギーも然り、

見える力で
暮らすということ、
何かを作るということ、

このことが
再び価値を見出し、
普遍となる社会に
なってほしいと思います。

今できること、の
エネルギーが大きい今こそ、
価値観を変える転機です。