陽だまりの詩
昼過ぎ、葉山から目黒のK邸に向かう。
K邸に着く手前で、ラジオから「陽だまりの詩」が流れる。
久しぶりに聴くが、身体中の細胞が喜ぶいい曲だ。
そしてK邸に着くと、誘われるように、西側に向いたバルコニーに足が向く。
先ほど耳にした曲がそうさせたのだろうか。
そこには、摺りガラス越しの、穏やかな陽だまりがあった。
朝の葉山の海。
防波堤に立つ。
相変わらず江ノ島がくっきりと海に浮かび、富士山がよく見える。
午前中は日に照らされるのでとくに明るく感じる。
熱いお茶の入った水筒とブンガク小説でも持ってきて、一日ここに座っていたい気になる。
波打ち際に立つ。
今日は波のリズムが実に穏やかだ。
打ち寄せてきた波の中に手を入れる。
思いのほか温かい。
海は太陽を受け取り、下手投げでやさしく放るように僕らに投げ返してくれる。
葉山の冬が暖かいのもうなづける。
さて今日の現場は、外壁の仕上げに左官屋が、竪樋を取り付けに板金屋が、ガラスを取り付けにガラス屋が。そして大工二人。
現場は大賑わいでした。
そろそろ足場も外れ、ご開帳。
日本の空間の特徴というべきか。
光と影の世界。
伝統的な木組みの特徴は、家の中にいろいろな影ができる。
それは、
渡りあごであったり、
チリ(土壁に対して柱が少し出ている、あの部分)であったり、
格子を透過する光と影だったり、
紙から漏れる柔らかい光だったり。
太陽光線や照明といった光の当たり方で、いろいろな表情を楽しむことができる。
一つの壁面、空間でも、味わい方は様々なのだ。
照明計画は、むしろ簡素に計画することが多いのだけど、よくハッとさせられるような空間に出会うことがある。
空間があまりはっきりと区切られないのも、その理由かもしれない。
今日は玄関扉の打合せのために、葉山の現場に行く。
それとともに土地家屋調査士のMさんが、所員を引き連れて表示登記用の測量図を作るために現場に来た。
現地での作業をひととおり終わると、二人で海の方角へ。
葉山へ来るというので釣竿を持ってきたらしい。
それは用意がいい。
Mさん、さすがです。
遊び心を常に持っておられる。
私は先に現場をあとにしたが、後で成果を聞くと、キスが4匹ほどとのことでした。
群馬藤岡の五十嵐さん。
達磨釜で瓦を焼いている人です。
今朝、K邸の外構工事用に、欠けなどが入って屋根には使えない瓦をたくさん持ってきてくれました。藤岡から朝の7時に。
そしてまた仕事があるから、と言って藤岡にとんぼ返りしました。
「瓦は人様の頭の上にのせるものだから、心を込めて」が信念の五十嵐さん。
初めてお会いしたとき、この信念に心打たれました。
まさにその言葉を地でいっている方です。
五十嵐さんが焼いた瓦をあちこちで使わせていただいて、ありがたい気持ちでいっぱいです。
今回は地べたで使わせてもらいますが、これからもよろしくお願いいたします。
外構も楽しみ。