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2016年12月20日

「構法」か「工法」か

カテゴリー: 家づくりの理念

自分が取り組んでいる建築の分野を
技術的に言い表すと、

伝統的な木造建築ということに
なると思います。

伝統的な、ということについては、
以前にもこの場で
書かせていただいたことがあるのですが、

「伝統」に対する私の姿勢は、

この現代において、
与えられた土地において、

如何に心地よい場を作るか、
如何に美しい場を作るか、
如何に愛に満ちた場を作るか。

そうした場を作る目的のために、
伝統的な技術がたいへん有効であるから
それを使わせていただいており、

つまり最初から
「伝統的であること」が
目的なのではなく、

以上の目的を達成するための
「手段」としてとらえています。

逆に言えば、
気をつけなければ、

伝統的だから心地よいとは限らず、
伝統的だがら美しいとは限らず、
伝統的だから愛に満ちるとは
限らないということです。

だから「伝統」という表現に替わる
言葉があるといいと思っていますが、

とはいえ「伝統」は
仕事の内容を伝えるのに
分かりやすいと言えば分かりやすく、
今はそれでいいかなと、
割り切っています。

それはともかくとして、
今日の本題は、
伝統、に続く言葉の話です。

と申しますのも、
伝統的な建築のあり方に対して
「伝統工法」、もしくは
「伝統構法」という、

同じ「こうほう」でも
二通りの表記を見かけます。

どちらを選ぶかは、
人によって様々のようですが、

これに関しては
私は強いこだわりがあり、

「工法」という表記を
必ず選びます。

「構」は、
かまえ、組み立てるもの、
つまり建物の構造や骨格という
つまり「モノ」としての表現、

一方で「工」は、
たくみ、職人の技、作る、
つまり、作ることの総体を
言い表していて、

それは大工をはじめ、
基礎も左官も水道も、
全ての職人の仕事を指すと
私は考えています。

それだけではなく、

建主さん、ご近所さん、
お手伝いに来てくださる方々、

そうしたたてものづくりを取り巻く
全ての人たちの仕事さえも含んだ
意味を持つ字だととらえています。

そんな「モノ」だけではなく、
「人」を感じる「工」という字、

私は「工」という字に
誇りを持ち、

「工法」という言葉で
自分の取り組みを
表現したいと思っています。

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