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2012年6月11日

低炭素、に向けて

カテゴリー: 家づくりの理念

本日、
低炭素社会に向けた住まいと住まい方の
推進方策について中間とりまとめ(案)に対して
パブリックコメントを
提出させていただきました。

まずは今日期限のところ、
今日の夕方から作文を始めたので、
間に合ってよかったです(笑)

そんな感じで書いたので、
内容に若干手を加えて、
以下のとおり発表させていただきます。

なお、この問題は、
建築の法規制の一つですが、
生活文化全体に及ぶことだと
考えております。

建築関係者だけではなく、
みんなで考えていきたい
問題です。

この趣旨に賛成の人も反対の人も、
この問題に関心を持っていただければ
幸いです。

・・・・・・・・・・

3.11を契機に
原発を巡る問題が
顕在化したこともあり、

社会全体が
省エネルギーを目ざすことについては
大いに賛同します。

また、
住宅の断熱性能を高めることにより
空調設備負荷が低減し、
省エネルギー化につながることも
理解できます。

しかし現時点で
「改正省エネ法」がめざす方向性は、
空調設備機械の使用により、
一年中快適と思える室温を維持することが
前提のように思います。

それは一見快適かもしれませんが、
医学的な見地からみて、
そのような住環境に慣れると、
私たちの暑さ、寒さに対する適応力が
衰えるとともに、

身体の体温調節機能の退化に伴って
免疫力の低下を招きやすくなる、
という指摘を耳にします。

一方で日本の住宅は、
つい数十年前まで
木と土壁の家が一般的でした。

さらに遡れば、
縄文時代の竪穴式住居は、
いわば土壁の家です。

日本の先人たちは
数万年に及ぶ歴史の中で、
寒さを凌ぐために、
適度に温度を保ってくれる
土の中に暮らすことを
選んできたのですが、

戦後の高度成長期を境に、
施工に手間と時間を要すること等を理由に
土壁は敬遠され、

代わりに暑さ寒さを凌ぐ手段として、
工業製品としての
「断熱材」を使うようになりました。

土壁は、
確かに断熱材に比べれば
熱抵抗が小さいです。

しかし私は
伝統的な木と土壁の家に暮らしていますが、

その実感として、
ほどほどに気密性を保持すれば、
冬場はそれほど冷え込まず、
適度に寒さを楽しむことができます。

また夏場は、
よく言われるように、
湿気がこもらず、
温度変化が緩やかであるために、
室内が灼熱地獄に陥るということがなく、
適度に暑さを楽しむことができます。

つまり木と土の家は、
外気の熱環境を「断つ」のではなく、
緩やかに外気から家を包み、
ほどほどに暑さ、寒さを
楽しむことのできる家です。

そのような家は、
先ほどの「身体」という視点で見ると、
もしかしたらかえって
健康的であるかもしれませんし、

私たちの気候適応力が
衰える懸念が小さいことから、
長期的にみればむしろ
省エネルギーにつながるような気すらします。

しかし、
そのような気候風土に培われた
伝統的な住宅は、

断熱性能を重視する
改正省エネ法が施行されると、
もしかしたらエネルギーの使用量は
高断熱の家と比べて遜色ない可能性があるのに、
法律の下で作ることができなくなります。

それは文化的に見ても
マイナスのことだと思います。

更に申せば、
そのような家は
シックハウス対策としての
24時間換気設備の設置義務が
免除されているために
換気扇を回すエネルギーが不要、

また住宅施工時に要する生産エネルギーや
その際発生する産業廃棄物量は、
断熱材をたくさん使った住宅に比べて、
有利なはずなのに、です。

このように、
空調エネルギーの低減のみという
狭い視点で省エネルギーを考えるのではなく、

生活文化、建築文化、
医学、環境問題等、
総合的な視点を踏まえて
省エネルギー施策を
改めて考えていくことが
できないものでしょうか。

とくに、
法施行まで数年の猶予期間が
あるようですので、

総合的な視点で
伝統的な住宅の省エネルギー性を
検証していければと思います。

そのような視点がなければ、
断熱性で不利な窓を
極限まで小さくした、
閉鎖的な家が主流となる
懸念すらありえます。

時に設備や技術は
必要だと思いますが、
しかしそれ一辺倒ではなく、

日本人として
四季のある暮らしを楽しむ、
という発想も
大切にしていきたいと思います。