上棟前夜
明日はN邸の上棟。
現場に刻んだ木材を搬入したり、足場を組んだり、何かと慌しくなってきました。
何度迎えても、上棟前夜は気持ちが高ぶります。
最近、森林や林業に関する本を読むことが多いのですが、今世界各地の森林では、至るところでたいへんなことが起きているようです。
人間は古くから、生きるために、豊かになるために木を伐採し、建築や土木用の木材や燃料として使ってきました。あるいは木を伐った跡地を、持続的に食料を確保するために、農地として使ってきました。
しかし、昔のように森林の成長と人間が木を使う量の調和がとれていればほとんど問題はなかったのですが、現在では人口が増え、循環よりも成長することが善しとされる考えの中で、明らかに木を使う量が増えてしまい、急速に森林が減少しているのです。
一方で、私たちの国の森林を見てみると、たくさん木を使うためにあれだけ有用な木を植林したにもかかわらず、現在の木材自給率は2割程度で、むしろこの国でとれる木をできるだけ多く使っていったほうがよさそうな状況です。
確かにこの時代、国産材を使う量を増やすことは日本の森林を再び豊かなものにする一つの必要条件かもしれません。
しかし、世界の森林事情を知れば知るほど、日本の森林問題を「量」で解決することは果たして森林に明るい未来をもたらすのかどうか、疑問に感じたりもしています。
仮にこのまま国産材の需要を伸ばす流れができたとするならば、経済の仕組みは森林の世界の調和を維持することができるでしょうか。世界の森林で起きていることと同じように、日本の森林が駆逐されることはないでしょうか。
森林再生に関する議論の中で、今需要のある集成材への加工を進めたり、あるいは海外輸出を増やそうではないか、という話を聞いたりすると、余計にその危惧を感じてしまいます。
木を使うということは、食べるという行為と同じように、一つの生命の力を私たちは拝借するわけです。
食事の前に「いただきます」と唱え、食べるときはお行儀を大事にするように、木を使うということも同じことではなかろうかと思います。
まして、一度使ったらこの先何十年、何百年と、目に見える形でお付き合いするわけですから。
だとするならば、木は流通商品として‘たくさん使ってあげる’モノではありません。
木を‘モノ’としてではなく、命あるものとして、そのふるさとと、育ててくれた人たちに思いを馳せ、然るべき行儀と作法のもとで使っていきたい、そして木がよろこぶ使い途を考えていきたい、木の使い途を考える立場の人間として、私はそう思うのです。
上棟までいよいよ1週間をきり、柿渋作業も大詰め。
今日はNさんご夫婦と私(私は11時過ぎまで)とで、柱を41本塗りました。
Nさんたちと私たちだけ、というのは久しぶりのことではないでしょうか。
手を動かしながら、Nさんたちの昔話をお聞かせいただきました。
共に仕事をするということは、お互いのことをよく知るとてもよい機会だと、改めて思いました。
今日は、ここに居る大工は小口さんだけ。
藤間さんと石山くんは、今頃現場で土台敷きです。
なすのぬかづけ。
1本切れば、3分でなくなる。
おまいら、もっと味わって食えー。
しかし、うまい。
あのシュワッとしたさわやかさが、夏に合う。
今日はN邸の柿渋塗り。
ここ最近の日曜日の恒例です。
私はコーポラティブ住宅の総会のため、早々に引き上げてしまいましたが、前回に引き続き、K邸のKさんご夫婦がお手伝いに来てくださいました。
急きょ昨日ご連絡をいただき、来てくださることになったのですが、塗るべき材木の量が多かったので大助かりでした。
何度も来ていただくなんて、本当にありがたい限りです。
さてと、いよいよ上棟まで一週間をきりました。
少し気持ちが高ぶってきました。
今夜はK田一家と家族とで横浜の江田にあるプランツに行き、その中にあるレストラン「COA」で夜ごはんをいただいてきました。
実は、「COA」は今日がこの場所でこの世に存在する最後の日なのです。
今日の昼、急にそのことを思い出し、ちょうどプランツに行かなければならない用事があったので、予約をして行くことにしました。
「COA」だけではなく、プランツ自身も移転のため7/25でこの場所から姿を消してしまうのですが、あいにくその日までに足を運べる日がなさそうなので、私にとって今日がプランツとお別れの日でした。
プランツとは、衣・食・住・遊・学といった総合的な生活の分野で商品を提案する商店の集積体で、自然栽培による農業を推し進める青果商ナチュラルハーモニーが主宰しています。
私がこの場所に関わるようになってまだ日は浅いですが、ここでは様々なできごとがありました。
多くの貴重な出会いをいただきました。
そして私自身、この場所から様々なことを学び、人生観や生活様式を見直す大きな契機となる場所でした。
建築設計者として、空間だけではなく、暮らし全体を提案していきたいと思うその心は、この場所が原点であり、この場所が目標とするべきところの一つでした。
思い出がつまり、このやさしく包み込むような空間がなくなってしまうのはたいへんさみしい限りですが、またどこかの場所で再び会える予定ですので、その日を楽しみにしたいと思います。
昨日に引き続き、Nさん今日も柿渋塗り作業。
今日は、柱を47本と小屋束を塗りました。
今日は材がたくさんあったので、K邸のKさんご夫妻、今日で2回目のI川さん親子、それと今日で5回目の参加のS藤さんと、たくさんの人が応援に駆けつけてくれました。
これから建てるNさんはもちろんのこと、K邸のKさんも参加し、またI川さんの家は私が改装をお手伝いした家なので、私にとって‘OB会’のような日でした。
これまで家づくりのお手伝いをさせていただいた方々がまたこういう形で集まって来てくださることを、とてもありがたく、うれしく思います。
梅雨らしいといえば梅雨らしい空の下、本日10回目の柿渋塗りの作業。
今日は7寸角と4寸角の通し柱と、7寸角の柱を塗りました。
今日は重かった!
F村くんに来てもらってよかった!
柿渋塗りも、あと残すところ柱と束。
大詰めです。