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2017年1月4日

素材の生命をいただく

新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

皆さまはどんなお正月を
お過ごしになりましたか。

私はといえば、
正月に体調を崩したこともあり、

テレビでラグビーを観ながら、
寝込んでいました。

ゆっくりラグビーが観れるのも、
ゆっくり寝込むことができるのも、
正月ならでは、ですね。

明日から仕事始めなのですが、

体調のほうは
うまい具合に間に合いそうなので、
大丈夫です。

さて今年の年賀状は、
以下の写真に、
「素材の生命をいただく」
という言葉を添えました。

黄土を横に引き摺って
掻き落とした土壁と、

五十嵐さんが
達磨窯で焼いた
一枚一枚表情の違う敷瓦。

職人たちの手による
土という素材を
様々な手法で生かした
表現です。

土は無機質で、
それ自体恒久的に存在するものですが、

職人が手塩にかけて育て上げたものは、
まるで生命が吹き込まれたようです。

事実まるで命あるもののように、
日によって見え方が変わり、

あるいは少しずつ
時の経過に伴って、
表情が変化していきます。

さて、話は変わりますが、

昨年末の大掃除で
アルミサッシの網戸を
洗ったところ、

十数年前とほぼ同じと思えるほど
きれいになりました。

よかったよかった、と思う一方で、
これは木の建具では
ありえないことだと思いました。

アルミサッシに限らず、
現代の建築を見てみると、

外部に使われる素材の多くは、
洗い流したら簡単に元に戻る、

つまり「永遠」を追求した
素材に囲まれているように思います。

そういえば昨年末に
誰かと何度か、

現代的な住宅が、
同じ素材に統一されて
ずらりと並んでいるまちなみを
たまに見受けますが、

それが美しいと感じるかどうか、
という議論になりました。

そこで聞こえてきた意見の多くは、
あまり美しいとは感じない、
というものでした。

一方で例えば、
日本の伝統的な建物が
立ち並ぶまちなみは、

木や土といった素材で
統一されていて、

その統一感がむしろ
美しいと感じさせるのですが、

現代の素材は
どうしてそう思わせて
くれないのだろうか。

ちょうどそんな疑問を
抱いていたところなのですが、

アルミサッシの網戸を洗ったあと、
自分の中でなんとなく
答えを得たような気がしました。

それは、
私たちはいつかは朽ち、
いつかは消えゆく
命あるものを美しいと感じる
本能があるのではないか、
ということです。

例えば一般論として、
美しいと感じる度合いは、

如何に均整の取れたマネキンも、
命ある生身の人間には
かなわないのと同じです。

この現代は技術が発達して、
ほぼ「永遠」の素材や工法が可能となり、

その集積として今の住宅は、
おそらく耐久性が
格段に上がっているのだと思います。

それはそれで、
いい面もあるのだと思うのですが、

正直ワクワクしない、
というのが本音です。

そこで
本能に素直な私は(笑)、

その本能にしたがい、

ワクワクすると感じる
‘生きている’素材の命をいただき、
‘生きている’職人の手で作り、

心地よい、美しいと思う場作りを
今年も試み続けていきたいと思います。

それでは今年一年、
よろしくお願いいたします。

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2016年12月31日

愛を育てる仕事を続けていきます

カテゴリー: 今日のできごと

今、紅白歌合戦を聞きながら、
今年最後の記事を書いています。

きらくなたてものやに
ご縁のある皆さま、

今年も支えていただき、
どうもありがとうございました。

きらくなたてものやの
今年の仕事を振り返ると、

「直す」仕事が大半でした。

数年前から、
「直す」仕事が
増え始めてきましたが、

ここまで割合が増えたのも、

既存のものを
大事に愛し続けていこうという
時代の意識の表れなのかなと思い、
うれしく思います。

愛、と言えば、
今年、来年と、

きらくなたてものやの所員、
仲間の職人、

そしてかつて
住まいの場作りを
お手伝いした
建主さんご家族、

そんなきらくなたてものやの周りで

少子化現象はなんのその、

子どもが10人近くも産まれた、
または産まれる予定です。

身近な方に
子どもが産まれるだけでも
うれしいのですが、

きらくなたてものやが
心がけていることの一つは、

場作りを通じて、
愛を育てること、

この現象が、
みんなで新たに作った住処で
愛を育んだ証ともいえるのが
とてもうれしいです。

この喜びに慢心せず、
来年も一つ一つ、

愛を育てていきたいと
思います。

2016年12月28日

宇宙はよくできている

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

冬は日が短いかわりに、

家の奥まで
日が入ります。

この長い長い
きらくな網戸の影を見て、

宇宙はよくできてるなと
改めて思いました。

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2016年12月24日

今年の象徴

地元の町内会が管理する
古い小さなプレハブ小屋の
雨漏りが酷く、

何とかしてくれないかと
頼まれたので、

雨漏り自体を
直すのではなく、

予算と効果を考えて、
その上にさらに
屋根を架けることにしました。

年の瀬に
こうした仕事を
いただいたのは、

直す仕事が大半だった今年、

自転車で通える範囲の
地元の仕事が多かった今年、

そんな今年を
象徴していたように
思います。

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百年前のミシン

カテゴリー: 神田え邸

神田え邸にて。

忘年会のあと、

建主さんと
電車がなくても
帰れる方々とで

午前二時頃まで
四方山話に
話が咲きました。

その話の中、
この家の家計を産み出した
手回しのミシンの話になり、

実際に建主さんに
見せていただきました。

百年近く前に作られた
おそらくごく普遍的な
工業製品だったと思うのですが、

なんででしょうね、

単に懐古趣味があるから、
とかではなくて、

それは時代を重ねても
美しいと感じます。

優秀な工業デザイナーが
星の数ほどいる現代でも、

太刀打ちできないとすら
感じる美しさ。

これは建築にも
言えることで、

この差はなんだろう
という問いが、

私が「伝統」を手段に
場の表現を試み続ける
理由の一つになっています。

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2016年12月23日

神田できらくな忘年会

カテゴリー: 今日のできごと

年末恒例、
きらくなたてものやの忘年会を
開催いたしました。

毎年地元の
大船で行っていたのですが、

今年は趣向を変えて
神田え邸の2階で行いました。

他のお客さんに
気兼ねすることがなく、

落ち着く空間で
じっくりと皆さんと
お話しすることができて
とてもよかったです。

神田え邸は、
こういう使い方も
いいですね!!

そして毎年忘年会のたびに
申し上げていることですが、

きらくなたてものやは、
私含めて3名、

しかしこうして気心知れる
たくさんの職人仲間の
技と叡智が集まって
成り立ってるんだなあと
改めて思います。

来年もこのチームで
楽しい、気持ちよい場を
作っていきたいと思いますので、

どうぞ皆さま、
よろしくお願いいたします。

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2016年12月20日

「構法」か「工法」か

カテゴリー: 家づくりの理念

自分が取り組んでいる建築の分野を
技術的に言い表すと、

伝統的な木造建築ということに
なると思います。

伝統的な、ということについては、
以前にもこの場で
書かせていただいたことがあるのですが、

「伝統」に対する私の姿勢は、

この現代において、
与えられた土地において、

如何に心地よい場を作るか、
如何に美しい場を作るか、
如何に愛に満ちた場を作るか。

そうした場を作る目的のために、
伝統的な技術がたいへん有効であるから
それを使わせていただいており、

つまり最初から
「伝統的であること」が
目的なのではなく、

以上の目的を達成するための
「手段」としてとらえています。

逆に言えば、
気をつけなければ、

伝統的だから心地よいとは限らず、
伝統的だがら美しいとは限らず、
伝統的だから愛に満ちるとは
限らないということです。

だから「伝統」という表現に替わる
言葉があるといいと思っていますが、

とはいえ「伝統」は
仕事の内容を伝えるのに
分かりやすいと言えば分かりやすく、
今はそれでいいかなと、
割り切っています。

それはともかくとして、
今日の本題は、
伝統、に続く言葉の話です。

と申しますのも、
伝統的な建築のあり方に対して
「伝統工法」、もしくは
「伝統構法」という、

同じ「こうほう」でも
二通りの表記を見かけます。

どちらを選ぶかは、
人によって様々のようですが、

これに関しては
私は強いこだわりがあり、

「工法」という表記を
必ず選びます。

「構」は、
かまえ、組み立てるもの、
つまり建物の構造や骨格という
つまり「モノ」としての表現、

一方で「工」は、
たくみ、職人の技、作る、
つまり、作ることの総体を
言い表していて、

それは大工をはじめ、
基礎も左官も水道も、
全ての職人の仕事を指すと
私は考えています。

それだけではなく、

建主さん、ご近所さん、
お手伝いに来てくださる方々、

そうしたたてものづくりを取り巻く
全ての人たちの仕事さえも含んだ
意味を持つ字だととらえています。

そんな「モノ」だけではなく、
「人」を感じる「工」という字、

私は「工」という字に
誇りを持ち、

「工法」という言葉で
自分の取り組みを
表現したいと思っています。

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2016年12月16日

観念して微生物が宿る場に

カテゴリー: 柳澤たてもの塾

柳澤たてもの塾にて。

今年の春の大型連休に
みんなで建前した便所棟が

明日のお披露目会を前にして
ようやく完成し、

二つある便所として
機能し始めました。

建前の時は、
これを便所にするのはもったいない、

一つ誰かの仕事部屋にするか、
という声も聞こえてきましたが、

観念して(笑)、
めでたく二部屋とも
便所となりました。

なおこの便所は、
水も電気も要らない、
微生物たちが分解する
コンポストトイレです。

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お風呂は職人技の小宇宙

カテゴリー: 柳澤たてもの塾

柳澤たてもの塾にて。

今朝高野槙の風呂桶が入り、

それに水道屋が
循環金物を取り付け、

大工が
塞ぎ板を取り付け、

電気屋が
照明器具を取り付け、

お風呂が完成しました。

早速高野槙の
芳醇な香り。

今日改めて思いましたが、
お風呂の仕事って、

基礎工事、
大工工事、
水道工事、
タイル工事、
建具工事、
硝子工事、
板金工事、
電気工事、
そして桶屋さんと、

わずか1~1.5坪の中に、
たくさんの職人たちの仕事が
凝縮されています。

お風呂を造作で作れば、
家の中で最も多くの職人が関わる
場所と言うことができます。

お風呂に入りながら、
彼らの仕事ぶりを
じっくりと眺めることを

お風呂の楽しみの一つにしてみるのも
いいかもしれません。

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少し旅気分

カテゴリー: 柳澤たてもの塾

柳澤たてもの塾にて。

今日は朝六時過ぎに鎌倉を出て、
北杜市武川町へ。

朝一番で
現場に着きました。

今は圏央道のおかげで、
都心へ出るのと
あまり時間が変わらない気がします。

朝現場に着くと、
澄んだ冬の空気のおかげで
美しい山の冬景色を
楽しむことができました。

写真には撮らなかったけど、
富士山もよかったです。

基本的に鎌倉どっぷりの
きらくなたてものやですが、

都会は都会で
楽しい人たちと出会え、

田舎は田舎で
美しい景色と出会え、

二時間かけて
少し旅気分の仕事も
なかなかよいものだと
最近気づきました。

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