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2007年8月16日

土佐漆喰のふるさとに行ってきた

カテゴリー: 今日のできごと


今年の夏、
川の旅で四国に行くことにしたので、そのついでに、
いつも家づくりで必ず、
外壁や室内の壁の材料として使っている
土佐漆喰のふるさとを見に、
高知県南国市にある田中石灰工業の工場を
見学させていただきました。

夕方遅い時間であったにもかかわらず、
丁寧にご案内いただいたIさん、
ありがとうございます。

まずは土佐ならではの、
塩焼きで石灰を作る工程を見せていただきました。

土佐地方は石灰岩の宝庫で、
昔からこのあたりでは、
塩焼きで消石灰を作っているとのこと。

石灰分を多く含むとはいえ、
石灰岩は鉄分をはじめ、
様々な不純物が含まれているのですが、
塩類を投入して焼くことにより、
鉄分等の沸点を下げ、
不純物が除去しやすい状況を作り、
長い時間カマの中で焼き続けることで、
石灰分を精製するのです。

焼く装置はといえば、
深さ7〜8mもする徳利型の「穴」。
深ーい穴とはいえ、
‘機械’に頼らず、
思いのほか簡素なのですが、
物質の特性を生かし、
重油などで焼いて作るよりも、
とても純度が高い消石灰を作り出すそうで、
こうして焼いた消石灰は、
結晶形状も含めて、
建築向きだとのことです。

この装置を納める建物も、
写真のとおり、
築百年近くの、
とても風情のある建物。

簡単な装置と手作業が、
こうしたものを作り出すということは、
意外であると同時に、
実にうれしいことでもあります。

次に、
土佐漆喰はこの石灰に、醗酵した藁スサを混ぜて練ったものなのですが、
その藁スサの倉庫を見せていただきました。

土佐漆喰は、
この藁スサが‘つなぎ’の役割を果たし、
他の漆喰のように糊の成分を必要としないので、
糊の成分が水で流れることがなく、
外壁でも使えるのです。

強い雨風に晒されてきた、
土佐地方ならではの建築材料ですね。

さてその藁スサの倉庫の中ですが、
暑い夏の中、
さらに蒸し暑い状態でした。
きっとこの蒸し暑さが、
醗酵を促すのでしょう。

このことも含めて、
土佐漆喰は、
南国、土佐の風土が生み出したものと、
いえるかもしれません。

ところで倉庫の中は、
牛舎の匂いがしました。
あの匂いは、
牛特有の匂いかと思っていましたが、
藁の醗酵した匂いだったようです。

内子の町に行ってきた

カテゴリー: 今日のできごと


四国の川を旅したので、
予てより行きたかった、
伊予・内子の町に行ってきました。

昔々、蝋燭で栄華を極めた町のことだけあって、
白や黄色の漆喰、
赤いベンガラ、
そして屋根には重厚な懸魚や鳥衾、
壁には燻し銀が鈍く光る海鼠壁の意匠が、
目立つまちなみ。

いずれも、
銭と手間のかかる仕事です。

半日かけてこの町を練り歩きましたが、
こうした様々な建築意匠があり、
また、まちの風景が変化に富んでいて、
実に楽しいまち歩きでした。

しかし!
陽射しが揺れるほど暑い!
それだけに、
道中食べたカキ氷の、
実にうまいこと!

カキ氷を食べながら頭を冷やし、
こうして栄華を極めた建築意匠も
見て歩いて楽しいのですが、
別に栄華を極めなくても、
まちで暮らす人々が、
楽しい、美しいと思えるまちのことを思いました。

午後少し、
中心街を少し外れたところにある道の駅、
「からり」というところに寄りました。

最初はごく普通の道の駅かと思い、
そぞろ歩いていましたが、
なんだか他の道の駅とは様子が違います。

そこには野菜や加工品などの直売所があったのですが、
ほぼ全てといっていいほど、内子産のもの。
それらを、おそらく地元の人たちの手で、売っています。
そしてそれと併設して、
それらを食べさせてくれるレストラン。

眼下には川が流れていて、
大人も子どももそこで水遊び、
また川辺のデッキにも、
多くの人たちがそこで戯れていて、賑やか。

地元の人も、旅人も、
この場所を思う存分、
楽しんでいる様子がうかがえます。

ここの建物はといえば、
どこかの建築家が設計したと思うのですが、
配置計画、また細かい部分で
様々な‘芸’を感じる一方で、
主張しすぎず、贅を尽くすこともなく、
ここに居る人たちを温かく包み込んでいる感じがします。

何も予備知識もなくフラリと来たところですが、
直感的に、ハード・ソフト両面で、
実にいい取り組みの建物だな、と思いました。

先ほどカキ氷を食べながら思っていた空間が、
すぐここにあったのです。

「からり」の屋上。
屋上とは思えず、
建物の気配を消し、
緑と人を引き立てるかのように、
ハーブ園になっています。

2007年8月15日

高知・桂浜に行ってきた

カテゴリー: 今日のできごと


四国の川の旅のあと、
男三人、
高知・桂浜に行ってきました。

川が流れ着く先は海、
ということで、
やっぱり果てしなく広がる海もいいなあ。

誰が提案するわけでもなく、
波打ち際に立ち、
遥かかなたの水平線を眺めました。

そのあとは、
「坂本龍馬記念館」へ。
確か私が学生だった頃、
一世を風靡した建物です。
伝統構法の建物を設計していますが、
たまにはこういう現代建築を見るのも、
いいものだ。

またここで、
坂本龍馬について学びました。
正直彼のことをあまり深く知りませんでしたが、
そこにある資料を読めば読むほど、
惹きこまれる人物ですね。

熱狂的な信者がいるのも、うなずけます。

そして彼は、
現代の言葉で表現すると、
揺るぎない信念と行動力を持つ、
たいへん優れた
「コーディネーター」だったようです。

たてものづくりやまちづくりの分野で、
コーディネーターと名のつく
仕事をしてきた私としては、
その意味でも彼の生き様、言動、
たいへん興味深かったです。

2007年8月12日

端材で木箱を作る

カテゴリー: 家仕事塾


今日も本当に暑い!

そんな中、
カジュアートスペースにて
第10回家仕事塾開催。

暑いからですかね。
参加者はSさん1名でしたが、
マキコさんと私とで、
和気藹々と。

今日は、
工事現場や
これまでの小屋作りで出た
端材を利用して、
工作するという企画でした。

Sさんは、
写真のとおり、CDラックを。

端材でも、
一日かけて、
十分立派に使えるものが、
できました。

こうして木の端材は、
どこまでも使えるのです。

もうそれ以上小さくならない、
というところまで来たら、
‘燃料’になりますしね。

こうしたものに光を当てる機会を、
これからも作っていきたいと思います。

2007年8月11日

みんなで緑の幕

カテゴリー: えこびれっじ


きのかの家へ。

相変わらず、
ここの子どもたちは、
縦横無尽に
走り回っています。

さて連日の暑い日、
やや西を向いているこの建物は、
西日が堪えるので、
皆さんそれぞれ、
創意工夫の西日対策。

多くの方々は、
緑の幕を作る試み。

縦に連携しながらの
この試みは、
協働住宅ならでは。

焼杉の黒壁と緑が、
またよく合います。

早く一面、
緑の幕ができるといいですね。

2007年8月10日

切り取られた風景

カテゴリー: 鎌倉く邸


昨日サッシが入り、
順次大工の手で、
取り付けられています。

その一つ、
写真のサッシは、
書斎の机の前の窓。

座ったときちょうど、
北側の柔らかい光とともに、
この切り取られた風景を
楽しむことができます。

間近の字を追いかけ、
目が疲れたときに、
遠くを思うように。

2007年8月9日

あついろ

カテゴリー: 鎌倉く邸


何ら混じり気のない、
青い青い夏の空の下、
鈍く妖しく光る燻し銀。

いかにも今日は、
アツそうな
色をしている。

今日の現場は、
大工をはじめ、
板金屋、
硝子屋、
電気屋、と、
現場もアツい日。

しかし、
アツいけれど、
流れる風の
心地よい日でした。

2007年8月7日

陽と影

カテゴリー: 鎌倉く邸


今日も、
陽と影の
濃い一日でした。

今日は午前中、
誰も居ない現場で
一人、面戸の柿渋塗り。

2007年8月6日

繰り返しの先にあるもの

カテゴリー: 鎌倉く邸


鎌倉く邸の
同じ間隔で連続する垂木。

この律動的な意匠が好きです。

そして、
鏡に鏡を当てたときに見える、
永遠の循環に吸い込まれるような感覚。

いつだったか、
古い日本の寺を見に行ったときにも、
この単純明快な意匠に、
心奪われたことがあります。

 朝、

 花、

 飯、

 脈、

 息、

 季節―

永遠の循環の先に見える光。

私は潜在的に、
これを求めているのでしょうか。

2007年8月5日

湘南だったら断熱材不要論その1

カテゴリー: 家づくりの理念


鎌倉く邸の屋根に、
ほぼ瓦が載りました。

試しに、
家の中からサワラの野地板に
手のひらを当ててみると、
外は灼熱の陽が注いでいるというのに、
そのサワラは、何事もないかのように、
ごく平静を保っています。

夏の暑い日、小屋裏って、
むせ返るように暑いという
印象があろうかと思いますが、
断熱材の入っていない、
厚い木の板と瓦の屋根は、
風が通るとむしろ、
家の中でいちばん涼しいくらいです。

こうした現象を見る限り、
この地域で木の家を作るときには、
いわゆる断熱材に頼らなくても、
木と土を基本に、
快適な室内環境は得られるのだ!
と私は思っています。

木や土自体、
決して断熱性能が高いわけではありませんが、
これらの素材の自律作用を生かしつつ、
家全体に風の流れを作り、
熱や冷気を和らげる仕組みを作るのです。

例えば屋根に関しては、
きらくなたてものやの場合、
瓦を載せ、その下には瓦を受ける野地板。
さらに1寸厚の通気層を挟んで、
家の中の天井を兼ねた、
厚い板による化粧野地板。
なお、通気層の空気は、
軒先と棟に換気口があり、
常に空気が流れています。

これで先ほどのような現象となります。

空気が流れるというのは重要で、
それは瓦と野地板の関係を見ても分かります。
瓦と野地板は、けっこう隙間が空いているもので、
この隙間が、熱を和らげてくれます。
試しに、太陽が燦燦と照っているときに、
瓦の裏を触れてみると、
これがかなり熱いのですが、
その直下にある野地板に触れると、
不思議なほど熱さを感じない。

しかし、その通気層、
過酷な熱や冷気を和らげてくれるということは、
常に過酷な熱や冷気に晒されているということですから、
蒸れたり結露したりしやすく、
その場合は、次第に周辺の素材が傷んでしまいます。

ですので、
通気層を設ける際には、
空気の流れる状況、
あるいは湿気のこもらない状態を作るということを
常に意識する必要があります。

そうした視点で見ると、
五十嵐さんの燻し瓦は、
たいへん優れものです。

と申しますのも、
釉薬を塗らずに、
達磨窯で焼いてくださる
五十嵐さんの瓦は、
スポンジのように水を吸い込みます。
この作用が、
瓦と野地板の隙間の湿度を
自ら調節してくれるのです。

さらには
水を吸うということは、
いずれはその水を吐きます。
その際に気化熱が奪われますので、
水を通さない今の一般的な瓦と比べると、
夏場に関しては、温度の変化が緩やかだといえます。

温熱環境のことだけではありません。
瓦のこうした作用によって、
野地板がいつまでも元気な状態でいてくれるので、
かえって屋根は長持ちするそうです。

緩やかに受け入れること、
呼吸すること。

これが家の健康の秘訣のようですね。

あ、人間も同じだ。